私がなぜ発達障害を名乗っているのか-異文化の橋渡し役として

今回は、会社員であり、いくつかの趣味を持って活動している私が、なぜ発達障害を名乗るのかについて述べてみます。
一言で言えば、「自分らしくあるために」。性同一性障害や同性愛者、在日外国人などのカミングアウトと同じでしょう。「劣っている」でなく、「違う」ことの主張です。
そのことを、何となくでいいのでわかってもらえる人がいると、私は息がしやすくなります。
でも、本連載最初の記事に記したとおり、演劇・舞台やボディワークなどの仲間に、自分の発達障害のことを話すと、「そんなの普通やん」「みんなしんどいんだ」または「普通に生活出来ているあなたが発達障害を言う必要があるの? 何に困っているの?」って言葉を返されることがほとんどです。
私の思いは「長所・短所をカバーしあえる」がゴールであるのに対し、まわりは「普通になる」がゴールのようです。「障害=自分たちより出来ない」と見る限り、後者になってしまうのでしょう。
同じものからは、新たなものは生まれません。私が持つ「違い」の主張は、自分が自分でいられるためであると同時に、社会に新たなものを提供することでもあると考えています。

さて、ここまでは一般論を意識した話でしたが、ここからは、まったく私個人の話になります。少しややこしい内容です。
私のある活動で、自分の聴覚優位(過敏)ゆえの長所を話したところ、嫌悪感をあらわにする人がいました。「その場に『病名』(アスペルガー)は関係ない」との主張でした。それ自体、障害を当事者個人の問題に矮小化する言葉ですが、ここではそれに触れません。「病名を使って楽しようとしている」との意味に解釈します。これはごく一例で、あちこちでそういう空気を感じます。
私は、自分のことを「がんばってきた」と思っていません。いろんな人に助けられ、生かされてきたと思っています。人に甘えて生きてきたのかもしれません。そのため、その分野・集まりの中で「がんばっている人」(「純粋派」と呼んでもいいでしょう)からは、「私は何も言わずに自分の力で勝ち取ってきたのに、あなたは病名を使って楽しようとしている」と思われてしまうのでしょう。
さて、私は「病名」を使って楽しようとしているのでしょうか。
私のことを、「あなたは、人と人をつなぐ橋渡し役だ」と言う人が何人かいます。私の活動領域や行動パターンを見てのことです。「それが出来る人はなかなかいない」とも。
この「橋渡し役」、今までずっと「誰にでも出来ること」と考えていましたが、この一件を機に、「純粋派」に出来ない、自分の能力であるとはっきり認識することにしました。「純粋派」と等価な、協力しあうべき関係であると。
さて、この「橋渡し役」の能力、発達障害と直接関係するものではないかもしれませんが、私が発達障害を持たず、少数派でなかったら、この能力を持つことはなかったでしょう。「橋渡し役」の土台となる私の趣味・活動は、発達障害と一体のもので、切り離すことは出来ません。
また、私のまわりとのずれは、発達障害という少数派に加え、数少ない「橋渡し役」という「2重のずれ」の構造であったと言えるでしょう。
この「橋渡し役」、コミュニケーション障害と言われる従来の発達障害観では考えられないことかもしれませんが、これも「発達障害」=「○○な人」という等式のない、とても多様な存在であることを証明するものと思います。
これからも、いろんな橋渡しをするべく、ブログ、リアルとも、私は発達障害を名乗りながら活動を続けていきます。

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(編集後記?を追記に入れました)
この4連載、最初は発達障害当事者向けに書き始めまたのです。立場、状況の違いから、主張するものが違ったとしても、まずは当事者同士が違いを認め合う必要があると。
しかし、自分の「少数派」について書き始めてから、対象が社会全体に変わっていき、かなり横道にそれました。
でも最後は、目の前で罵声とも言える嫌悪感を示されたことをきっかけに、「橋渡し役」という発達障害と切り離せない能力に気付き、連載最初のテーマ「私が発達障害と関係なさそうな記事を書いている理由」に何とか戻ってきました。
主旨がはっきりしない連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。何でも結構ですので、質問、意見などいただければと思います。
なお、この「橋渡し役」、以前から何となく感じていました。この記事も見ていただければと思います。
1万アクセス突破に深く感謝-人と人がつながる場を目指していきます-」(2010年3月16日)

この「橋渡し役」、リアル友達には何となくわかってもらえると思いますが、ネット友達の方には「多趣味な人」くらいしかつかめないかと思います。「橋渡し役」については、機会があればどこかで記事にしたいと思います。

テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム - ジャンル : 心と身体

コメント

No title

こんにちは、おひさしぶりです。

なるほどねぇ…。
僕は、手術で声帯を摘出したので「しゃべれない」
「音声・言語機能の喪失」という意味では
劣っている⇒現状(健常者)復帰がゴールという考え方に
何となくなっていたのかも知れませんね。

ただ、僕はいま食道でしゃべってはいるけれど
人を笑わせたり、説得したりすることは自由に出来て
声帯がちゃんとある健常者でも
そういう事が出来ない、苦手な人は大勢居る…
となると、それってナンなんだろう?とは思うわけですよね。

また、クリエーターとしてある程度「高度な能力」が
評価されているから、障害があっても仕事があるわけで
そういう能力を磨くという意味では、
障害に甘えてはいけない、という事も一方にあって

要は、障害があろうがなかろうが
何か「役に立つ力」があるかないか?が判断基準なのかな?

…と、僕は障害者も健常者もボーダレスの
そういう価値基準がいいのじゃないかと思います。

だって、スティービーワンダーを
目が見えない視覚障害者と蔑むアホは、この世におらんでしょ

認証用キーワードを見たら9999でした!こんなの初めて。凄いね。

Re: 癌ダム4Gさん

コメントありがとうございます。
「ゴールの違い」の部分、他の方にも「なるほど」と言っていただいています。
こんな当たり前のこと、書くほどのことかなと思いながら記したのですが、、、
今の日本、「世間並み」を強要されて埋もれてしまった「役に立つ力」が山のようにあると思います。ボーダレスの価値基準になれば、みんな楽しくなると思うのですが、、、
「9999」ですか。そんなこともあるんですね。私は見たことないです。

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まさ(climbmasa)

Author:まさ(climbmasa)
40歳を過ぎて、人とちょっとだけ違う自分に気付きました。ここでは、自分が感じたことを、そのまま表現していきます。
広汎性発達障害(アスペルガー症候群)の当事者です。「人並み」ができず、いろんな場面で苦戦していますが、多くの人に助けられながら生きています。
このブログを通じて、少しでも多くの人に発達障害のことを知ってもらえればと思います。
「自己紹介」カテゴリに、私のプロフィールを置いています。

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